洪水「ディリューヴィアルメア」

もうどうにでもなぁれ

Dじょおん&しおんDやちえAさとり構築 大反省会

幻想人形演舞-ユメノカケラ-非公式パッチ、皆様如何楽しんでおいででしょうか?
公開から既に1ヶ月経ち、加えてパッチを当ててからまだ3週間しか経っていない癖に、もう新環境においての試合回数が100戦に近付こうとしており戦々恐々としながら狂戦士生活を送る毎日です。
普段は東方創想話という古の残滓に縋ってはブログ記事を書いている身ですが、非公式パッチで新環境へと移行したこの時期において、環境初期がどういう雰囲気だったかの備忘録を遺せれば良いなと思い筆を執らせて戴きました。
昔は演舞の記事しか書いてなかったんだけどなあ
ですのでまあパッチ未適応もしくは適応予定無しの方はご注意ください。

今まで投稿した大会備忘録でない凡庸構築パーティ記事は青龍Aあきゅう軸、陰キャPけいね軸、クロスチェンジ投影パの3つ。
あの頃に比べれば演舞も絵もだいぶ上達したなあとも思わされますが、それは演舞環境に未だにしがみつく変質者全体に言える事で。環境下馬評だけで構築したパーティでは環境に微妙に迎合しない部分が多く、その結果の反省会会場となってしまいました。
ただ新環境へ移行してから初めての構築にしては中々の完成度だったので、まあこういう形で残しておきたくもなった訳です。
ぐだぐだ書き殴った文章も散見されるかとは思いますが、どうぞお目溢しをしながら読んで戴ければ…。

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新人形5体採用は流石に頭が悪くて面白い。
海外勢の人形調整の上手さに感服するのみですね…。



個別紹介

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Aつかさ@小型ビット 好奇心
紅H42A50B38
171-154-129-75-100-110
先読み/応急手当/低速移動/アップビート

今回パーティを作る段階で一番使いたかった人形です。
出来る事を調べた段階では攻撃速度を落としたHD鬼火ファイアロー的な運用が一番向いているという評価だったのですが、lv70での習得技に先読みと低速移動が並んでいるのを見て興味の方面が一気に傾きました。

アップビートで流しながら低速移動と応急手当で集弾アタッカー相手に上手く立ち回り、先読みを使って負担を掛けていくのが理想形。
その反面散弾アタッカー相手には手も足も出ない為、対面から逃げられたら悲しみを背負うという悲しい弱点を背負ってもいます。
振り方は適当。H16n-1にしつつ集弾耐久指数を22000超えるぐらいにして、残りをAに回した感じ。


アップビートもエンカレッジも両方覚える人形なので悩ましい所はありますが、今回は先読みの遂行能力を上げる為にアップビートで。
小型ビットは低速移動でSが下がった状況だと相手の先制技で先読みを透かされる可能性が十二分にあるので、そこへの対策でした。
ユメノカケラ入ってからはPあや対策をわざわざ少ない手持ちからやり繰りする必要が無くなったので、小型ビットの採用は本当に久々という…。

よって、この型を運用するに際して特に嫌だったのが交代の連続によるSP消耗、及び先読みを見越してチェン迅雷で流されるパターンだったので、裏に置く人形についてはまずそのポイントを先に考慮した上で吟味する事になりました。

 

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Dじょおん&しおん@金の簪 ネガティブオーラ
黒H46B48C18S18
223-95-124-147-95-104
ファイアウォール/ポルターガイスト/氷獄/チェンジリング


チェンジリングを吸える最強人形。
ネガティブオーラと闇の衣で色々と吟味した結果、ユメノカケラ段階での強力な人形に有利が取り易い属性と種族値をしたここに白羽の矢が立ちました。
金簪適正が高い上にファイアウォールで持ち物を焼いたり氷獄で炎属性を一方的にいたぶったりチェンジリングを覚えたりと、書いてある事がはちゃめちゃに強い新人形だったので使ってみたかったというのもあります。

振り方はEマミゾウを意識した部分多め。恐らくDじょおん&しおんの金簪運用における基本形はこれで良いのではないでしょうか。
攻撃範囲と後投げ性能の高さで、ひとまずどんな相手にでも選出する価値がある人形だったという印象が強いですね。

因みに特殊衣装で女苑だけにしてるのは南方の地脈型を特殊衣装で紫苑だけにしてるから

 

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Dやちえ@兵糧丸 徹底拘束
白H48C18D64
209-×-100-119-205-55
ドレインシード/ポイズントラップ/森羅結界/エナジーアブソーブ

疾風迅雷を止めれる最強人形。
上2体が散弾アタッカーを止めるのに向いていない点と大地人形で迅雷を止めるにはEさきの存在を加味すると割に合わない点から、徹底拘束で数値受けするのが一番の選択肢だという結論に至りました。
その上で交代戦に際して何かトラップを撒ける人形であり、かつDじょおん&しおんと弱点が被らない相手である事が好ましいという条件を加味。
残ったEキスメとDやちえを比較した際、回復速度と数値面でDやちえに軍配が上がった為、またしても新人形の採用となりました。


振り方はH16n+1とDぶっぱを両立した上で、水・大地属性への遂行速度を上げる為にCに若干割いた形。
ファイアウォールチェンジリングといったつよつよ技も持っており大変悩ましかったのですが、Dやちえにやらせたい事を考えて泣く泣く不採用に。
速攻回復技を持っていないという一点でかなりバランスの取れた人形ですね、結構好きなタイプ。

結果としてこの並びを知らず知らずに開発してしまった訳ですが、時を同じくして他の演舞勢の間で『この並び強くね?』という風説が流れ出し、起源を主張する事は出来ませんでした。とても残念。

 

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Eミケ@拘りベルト 得意分野
碧AS64B2
145-167-111-×-75-167
ハンマーバッシュ/ディストーションボム/チェンジリング/ハイトーンクラッシュ

Eネムノ@拘りベルト 仁王立ち
碧CS64D2
145-75-85-177-91-183
ラストスラッシュ/スピニングエア/チェンジリング/ラッシュアタック

上記3体を見返した時に、次に欲しい枠が幻風毒に繰り出して上から叩けるアタッカーだったので鋼鉄人形から適当に探す形に。
最初は対風属性を重く見た上で鋼/歪の期待の新人形であるEミケを採用していたのですが、後々になってパーティ全体の大地耐性と音耐性のガバさに気付きそれ以上の策を講じる必要が生じた為、急遽Eネムノに変更という形になりました。

両者共に火力は申し分無く、加えて範囲も優秀であるという点が高く評価出来るのが素晴らしいもの。
自分は素早さ負け恐怖症なのでベルトS115族でも平然と碧印を採用してしまうのですが、それでも尚扱い易かったのも良かったですね。単純にベルト人形が対面負けの上からチェンジリングを撃って後続に繋げる動きが出来るだけでも嬉しいので…。

サブウェポンについてですが、Eミケはハイトーンクラッシュをほぼ確定枠にしても許される一方で、Eネムノは技が豊富過ぎて悩ましいというのもありました。
受けに来た鋼鉄と歪の両面を見れるラッシュアタックで今回は一応良いかなあとは思いつつも、いざこちらが受け出し側に回ると中々に気が重く…。

 

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Aさとり@生命の符 影縫い
白BD64H2
271-×-122-×-134-55
クロスカウンター/水鏡/エンカレッジ/死者の呼び声

この期に及んだ際に気付いてしまった事に、『チェン迅雷を縛る動きと展開役や陰キャをアプビで縛る動きがパーティで完成しているなら当然コイツも強いのでは?』という最悪な気付きがありました。
最悪過ぎた。そして強すぎた。

Dやちえでポイトラとドレシを踏ませた後でAさとりに引き継ぐのはかなりの悪行だったと今では痛感しています。
ドレシや猛毒ダメ蓄積からの回避手段である素交代と交代技を片側ずつ縛った選出が弱い訳が無い。
回復手段に乏しいAさとりにドレシの恩恵を最大限受けさせる為にもBDぶっぱで振った訳ですが、本当になんなんでしょうね。
エンカレッジも滅法刺さりますし、Dやちえの相方はDじょおん&しおんよりもAさとりの方が合う説を個人的には推していきたい。

今度ポイトラに割り振ったパーティを使う時はEネムノにバリオプ森羅を搭載しても面白いかもしれない

 

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Aみよい@銀の簪 活発
紅H28A64D38
149-183-90-×-149-55
滝落/憂鬱の雨/スクリューロック/チェンジリング

下馬評ではAみよいが強そうという話をよく聞いていたので、流石に停止対策あった方が良さげだという一心で採用。
全体的に歪に弱いパーティにもなっていた為、そこの耐性が得られたのも好ましい事ではありました。

後は丁度良く銀簪を入れたかったのでそこも入れて、積みアタッカー対策に憂鬱の雨を採用して、スクリューロックはEネムノが居なかった時に毒属性への遂行能力が無かった事に関するせめてもの反骨精神。
ポイズントラップを踏ませる以上は酒宴ドランカーを使う事が出来ないので、そういう点でもしっくり来る技構成にはなっていました。
Hの種族値が本当に低く使っていて耐久がギリギリの場面が多かったものの、水属性が単純に優秀だったので事無きを得ていたのでしょう。



反省会

10戦はしたと思いますが、環境理解が出来ていない段階の一番最初のパーティにこんな陰キャ全開のパーティを使うのがそもそも間違っていた可能性が高いです。
環境誤認のダメだった例としては、今に至るまでAみよいを殆んど見掛けていないという点があって、酒宴ドランカーと二段構えのある積みアタッカーはそんなに魅力的ではなかったんだなあと…。(Eサニーは流行らなかったでしょと言われて首肯しか出来なかった)
銀簪Aみよいの枠がそこまで意識的に役割を持って働いていなかったので、このパーティの構築段階での欠点はまずそこでした。

とは言えそんな事は本当に些事で、今回の本当の反省点はなんと言ってもコイツ。

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環境を瞬く間に席巻した上、日々環境に最悪な方向で適応した型が次々と作られるこのDおきなとかいうtierS+++人形に対し何も出来ないのです。
見通しの甘さもあったとは言えども驚くべきはその性能、こっちも対面するまでこの車椅子ジジイの強さを半ば侮っていたので…。
DやちえAさとりの並びで駆逐しようにも、テイクオーバー千変万化で冥属性と化し逃げられるのを防がなければならない時点で終わっている。
そもそもテルミットの遂行速度もあってどうしようもない。そんな人形の対策を見落としてAみよい対策なんかにかまけていた時点でそりゃ反省会にもなります。
Eメディスンが裏から飛び出てきて試合終了する展開を憂う時代からDおきなが変な事をしてきて試合終了する展開を嘆く時代になってしまった…。



まあそんな環境だけど皆も演舞の新環境を楽しもうな!!!!!!!!
Dおきなに嫌気が差したら非公式パッチ開発陣に斬奸状を送りつけて性能を下げて貰うのも手だ!!!!!!!!
あと剛欲異聞まだ出ないな!!!!!!!!!おかしいぞ!!!!!!!!!!



最後に空気の読めない私信ですが、twitterでも申しております通り10/24(日)開催予定の秋季例大祭にて、す18bのスペースでイラストの再掲本を出させて戴く予定です。
boothでも軽く出すつもりで居るので、お時間ご余裕ございましたらお手に取って戴ければ幸いです。
去年の小説本はもうほぼ再販予定無いから挨拶用が無くなって暫くしたらどっかに上げるかも

東方小説投稿サイト「東方創想話」 作品集236 概略

前回作品集では変則的な書き方になってしまったのでこの形式はほぼ半年ぶりという計算になります。
幻想人形演舞の海外勢による非公式MODがこの間発表されたのでまたそっちの記事も近々書きたくはあるのですが、なんかそそわ関連の記事ばかり並んでいるのが壮観でそれを崩したくない思いが…
因みにあちらの方には有志として久侘歌ちゃんの立ち絵で参加させて戴きました。クレジットに名前が乗るのは誠に嬉しい事です。
剛欲異聞も遂に8月に出る事がほぼ確定していますしそちらも楽しみ。

 

まあそういう事でここいらに東方創想話という東方小説の投稿サイトがありまして、今回はその236個目の作品集についての概略記事となります。
概略とはなんぞやと言いたげに感想ばっか書いてる身ですが、まあ1kb=500文字換算でいつも通りなのでいつも通りお付き合い下さい。

 

東方創想話 作品集236(2021 5/14-08/20)

 

概略

・初投稿の方は8名、物凄く期待できるムーブをしている方もいらっしゃるので楽しみ
・作品集が埋まった時点での2000点超えは3作品、実際今作品集は最大トーナメント編でした
・埋没まで3ヶ月超、去年の同時期と比べるとペースがかなり落ちてますね


ピックアップ作品紹介(作者名敬称略)

  • イン・アワー・ロータス・ランド 作者:Cabernet サイズ:132.4kb

美宵達座敷童子が一つの家の栄枯盛衰を過去から見守ってきた事の陳述。


この物語の何が強烈かと言われれば、間違いなく二十世紀という動乱の時代を駆け抜けた座敷童子たちの描写の積み上げと、幻想郷の時代推移と共に変わっていく大衆の生き方なのでしょう。
それ故に座敷童子が淡い夢に酔わせ記憶の断絶を引き起こさせた事によって、その時代推移の暗部の仔細を誰も話せずに現在の時間軸まで生き続けてきた美宵ちゃんの悲壮が光り、そして過去がより重苦しく映るのです。
オリジナルの家系図を以て過去の人里についての描写を深め、かつ三桁ものkb数によって表現されたこの『二つの心臓の大きな川』の如き物語は、最早ありきたりな悲劇の域をとうに超えていたのでしょうね。
終盤に至って文中に蓄積させた悲哀が堰を切って放出され、読者側の感情移入を強めてきている文章の作り方も実に巧妙で、作品に対する感情のコントロールの上手さを感じたものでした。
にしても蛮奇といい依神姉妹といい鳥獣戯楽といい彼女達の語る物語もまた面白く、それによって美宵の語った物語に一層に深みの出てくる物語構成もまた乙なものです。
この長さでしか得られない感傷と読後感に支配される、激甚な一作とも言えるような長編でした。
それはそうとしてこれが東方創想話における美宵タグのまだ2作目という事実が凄く謎。

 

  • 歩くような速さで 作者:くろさわ サイズ:48.0kb

ルナサの奇態な教諭依頼とその末までの話。


この話は伏線が後々に開花するような中編ではなく、寧ろ日常の内にあった特別な事を数個纏めて書き出して物語の形としているような雰囲気から成立しているものであったと言えます。
だからルナサがレミリアパチュリーと交流し彼女達の成長から何かを得る、といった事が特徴的に描かれる訳では無く本当にその楽器の腕前の成長を喜ぶ講師の視点でこの物語が綴られていたと思うのが一番自然なのかなとも。
そういった日常の起伏の中に挟まれる魔理沙や早苗も物語の一員として違和感無く溶け込んでいる様も妖精メイドたちのキャラの立ちようも、タイトルの音楽記号のように緩やかに進行している物語を演出しているようで面白かったり。
後は終盤のレミリアパチュリーが演奏会を開くその開場間際の描写で一瞬文調が変化するのも、演奏会の空気をその文調によっても表現しているかのようで雰囲気作りが実に綺麗な物語でした。
音楽的な妙を含んで展開される会話も見所な柔らかい空気の作品と言い換えても良いですね、好き。
早苗さんとウォークマンの組み合わせと聞いてサークル:芦山文學さんの『コロラドから来た男』(『大芦山文學紀要』収録)を思い出すのは性でしょうね。作品の毛色は違うとは言え。

 

  • そのたびごとに 作者:うぶわらい サイズ:11.8kb

阿求だけが覚えている小鈴と積み上げたじゃんけんの記憶。


何と言っても、小鈴がお決まりの癖でお決まりのセリフでお決まりのパーを出す、そのなんともない行動に求聞持の視点を通す事によってそのトレース具合を面白おかしく、かつ阿求の情動を以て描かれていたのが心地良かったのです。
御阿礼の子という独特の、謂わば小鈴よりもずっと大人びて描かれるべくして描かれる立場が序盤の語り口感情持ちでは強く見える一方で、後半に至るにつれてじゃんけんが段々と交友関係の一端の行動として描かれるようになっていき、最後には何の変哲もないただのじゃんけんとなって阿求の描写も小鈴と等身大になっていく様は、複数のチャプターで区切られた短編はかくあるべしとすらも思わされた程でした。
特に阿求を描く作品というのは、やはり阿求の有する常人ならざるものにスポットを当て鮮明に映し出してくれる作品が好きなのだなあとも思わされます。

 

  • 私らしくいきましょう 作者:朝顔 サイズ:17.7kb

布都と一輪の華やかな一日の話。


物部布都というキャラクターの、やや時代錯誤で道教よりも神道に寄ったスペルカードを使うような側面からこういった物語を紡がれるものかとある意味関心したというのもあります。
それでいて彼女達の時代感覚や少女性という部分にも踏み込んで丁重かつカラっとした物語として仕立てていたというのも実に面白く、『自分らしさ』という主軸も含めて気持ち良く読ませて戴きました。
何というか真面目な箇所とちょっとふざける箇所の文中の流れが啀み合わずに両立しているのも話の立て方の綺麗さを感じもしましたね。
原作のあれこれを作品の要素として昇華させるのが好きな方の作品なんだろうなとも思えた作品です。

 

  • 具体的な生活 作者:ドクター・ヴィオラ サイズ:49.4kb

文の奮起、及びはたてが追い求めたうつくしきものの姿を綴る為の物語。


この作品の素晴らしい点として、冬山の厳しさと雪模様の厳しさで文章を仕立てつつも、物語の主要となるポイントは色彩豊かに彩る事で冬の残酷さをこれ程かと表現しながらもその中に根付いた温かさをも内包させていた事だと思っています。
その上で文とはたてが山の険しさに挑む際において、対峙した時のその友情関係をうつくしいことと扱う事で冬の残酷さをも二人が打ち破ってくれるという確信さえも抱かせる動機付けのやり方が素晴らしかったのです。全体の流れがほぼそうであるべきという展開の中で進行し、結果全てが在るべき場所に戻った上で文もはたても胸中に以前よりも強い思いを持って物語を終わったこの物語は、読後も熱を帯びた爽快感を感じさせた程。
かつ作中では改行や文の取り方が練られており、読者が視覚的にも物語の勢いを把握しやすくなっている構成もまた、氏の作品に対する技量や思慮の一部分に触れさせてくれたという気分を味わったものです。
それに美的センスに囚われない"うつくしさ"や天狗としての生涯の趣味への打ち込み方といった登場人物の個々の想いも読ませる文章の取り方が緩やかで透徹で愛おしい作品とも思えました。

 

  • 見てる 作者:夏後冬前 サイズ:20.9kb

二人の念写使いが意気投合して写真を撮る話。


はたてのポジティブ性と菫子の若干斜に構えた感じの対比を上手く使った上で起承転結の物語に丁寧に落とし込み、キャラクターのちょっとした成長物語としても機能させていた物語として実に巧妙でした。
事件から逃げようとする菫子を諭すはたての語調に若干の弱々しさを湛えさせて、菫子視点の書き口の中での感情のハードルを下げさせていた点についても、作劇上で読者に感情移入させ易くしているように感じて良かったり。
個人的には燻製というちょっと洒落た小道具を使ってはたてと菫子の邂逅を楽しげに描いていたのが特に好きなポイントで、会った場所の舞台演出としても共通事実で話に花が咲く前の緩衝材としても納得が行くように描かれた繊細さを感じます。
何と言いますか、全体的な流れがとてもスムーズでスクロールバーが後どれくらいかとか確認しようとする間も無く、丁度良い長さの短編として落とし込んでいる面白い作品と考えるのが一番筋が通っているのでしょうね。

 

  • 唯春の夜の夢のごとし 作者:灯眼 サイズ:36.2kb

女苑が紫苑の禍福で儲ける夢の中の話。


女苑の視点を介して描かれる人里の模様と、それが物語が進む毎にどんどん変容していく様のトントン拍子感覚が面白く、破滅へ一直線に駆け抜けるような感覚を覚えるような物語です。
一応ジャンルを明文化してしまえばこの作品は恐らくシュールギャグに位置するのだと思いますが、それでも読んでいる最中は全然そんな事を思わないというのはそれだけ物語として綺麗に成立していたからなのかもしれません。
実際、姉妹という関係性を不変の物として扱った上で女苑が紫苑へ抱く感情を揺るがしていた書き口が、巡り巡って女苑の我欲の矛先が全てを無かった事にしようとしたというのが、そうあるべき展開と思えるぐらいには力強かったのです。
ついでに作中で仄かに語られた紫や慧音、阿求に小鈴の言動も『このキャラクターならこうするだろうな』という感覚を伴っているのも、キャラクターの人選が氏らしいというのも含めて面白く読めました。
中盤の女苑の掛け声はやっぱり誰しもがSOUL'd OUTを思い浮かべるんですかね?ですよね?

 

こいしの視界に入った地上の四季折々の話。


無季節の殺風景が広がる地底の描写から始まって、そこから春夏秋冬とこいしの地上探索を四篇連立させながら、その上で些細な描写に地霊殿でも年月が経過しているという要素を加味させている物語構成が実に際立っていました。
それで居てそれぞれの季節において特色のある情景を書く中で、その地の文がこいしの五感を介した少女チックな文章としてきっちりと整えられている箇所に、物語としての完成度の高さを見出したもの。
しかもさとりの扱いを単純に地底における微細な季節変化を示す小道具に留めずに、こいしとさとりの関係性という形で再利用していく妙もあって、雰囲気物の短編への執念に近い感情さえも感じられそうで。
最終的に地霊殿の執務室が無季節から季節ごちゃ混ぜになるのも何気に好きだったりします。

 

  • A to Z memory 作者:カニパンを飾る サイズ:169.8kb

AからZまでを通して描かれる、霊夢萃香魔理沙と幻想郷のスペクタクル。


この作品は幻想郷にあって幻想郷にあらぬような独特の世界観のようで、読み進めると段々作品がどういった構造をしているのか漸く分かってくる、そのタネ明かしの順序がかなり練られた長編でした。
大きな変化を巻き起こしてしまった魔理沙とその変化に対し何も出来なかった霊夢の間の隔絶は余りにも惨く、全てが明かされた頃には全てが終わって何も太刀打ち出来なくなってしまっていて離愁以外の表現のしようも無いレベルで。
ただ、他の方の感想に見られるような辛さを自分がそれほどまでに感じなかったのは、恐らく氏が同作品集に投稿された『れいすいかショートショート』における霊夢萃香のほんわかとした雰囲気が、きっとこの作品においても最終的には大団円に落ち着いてくれるのではないかという期待を抱かせたからなのだと思います。
その状態の中、世界から爪弾きにされた者同士の日常シーンへと至る為にもう一度霊夢魔理沙を引き合わせた上で、しっかりと離別の挨拶を以て決着を付けてくれた展開には感謝しかありませんでした。
本当にここまで長くて正解な作品で、AからZまでのタイトルが皆意味を持っていたのも素晴らしく、長編と言うよりも最早巨編と呼んだ方が差し支え無い物語だったのでしょう。
読み返したいという思い以上に初読の感想をずっと心に仕舞っていたいという感情が大きい作品ってのもまた乙な物ですね。

 

  • 海辺の宿題 作者:海景優樹 サイズ:58.2kb

幻想郷に顕れた海と、それに対する村紗の想いの物語。


村紗の抱いているであろう海への感情を善悪問わず描く舞台として幻想郷内部に海そのものを持ってくるという発想がまず好きなのですが、それに付随した幻想少女達の楽しげな雰囲気を主軸とは関係ない部分で描いてくれたのもまた好きでした。
その何気ないかのような描写のお陰で村紗の海へのスタンスの浮き足立っていない部分が浮き彫りになるからこそ、一度目の海小屋後のこいしとの問答や二度目の海小屋後の戦闘シーンで見せた激情が映えていたのかなとも。
加えて、この作品のオリジナルキャラクターであるローレライの立場はかなり薄い方だったのですが、それも聖や命蓮寺の面々が終盤で介入しても煩くならない要因となっており、ここも村紗の心情変化を強調させる為の要素になっていたのです。
そうやって作品全体で村紗の感情の起伏に焦点を当てた上で最終的に全てを乗り越えさせ、海を消す消さない以前で物語が終わりを迎えた所に、村紗の吹っ切れとの同期さえも感じて感情の扱い方の上手さを見たものでした。
剛欲異聞が出るにあたって村紗についての多少の掘り下げがあるかと思いますが、それでもしこの作品に瑕疵の出てしまう描写があった場合はこの作品が時期の境目を感じられる示準となりそうでちょっと複雑な気分もあったり。

 


先述もしましたが今作品集は本当に素晴らしい作品が多く、一人一作のみの紹介という縛りや自分の選り好みの問題で多様な珠玉の作品を紹介出来ていないという問題が強烈で…。
作品集内でポイントが高い順に上からローラーしていけば他の面白い作品とも邂逅出来るハズですので、気が向いたら是非慈善事業ぐらいのお気持ちでどうぞ。
本当に面白い作品が多くて紹介漏れを列挙してもかなり長くなるから出来ないのも苦痛。

 

後はいつもの勝手な私信となりますが、10月24日開催予定の秋季例大祭においてサークル申し込みをさせて戴きました。
今までにtwitterに投げてきた絵や新規で書いた絵を10枚ぐらい掲載したイラスト本を出す予定ですので、まあそれなりの時にまた告知します。

東方小説投稿サイト「東方創想話」 作品集235 感想後編

前編を投稿した時に1ヶ月以上掛かるかもしれないな、と思っていたのですがこうして3週間で投稿する事が出来て良かったのなんの。とりわけ忙しい時期も過ぎ去って、束の間の休息を味わいながら創想話に入り浸れる感慨を身に染みて感じております。
現在最新となっている作品集236からはまた概略のスタイルに戻していきたいと思いますので、宜しければ今後もお付き合いくださいな。

 

ピックアップ作品紹介(作者名敬称略)

  • 舟幽霊の復讐号 作者:ドクター・ヴィオラ サイズ:32.9kb

感想を書き過ぎて結局向こうにも投稿しちゃうの、なんだかんだ言って自分で設けた言い訳すらも破っている感じがあってもうアレですね。
個人的にはとりわけ作中で何度も扱われた十割という単語も好きで、聖という超越者を表現しながらも村紗の行動描写にも一貫性を与えていて実に読み易い。その一方で聖が葬送十割の目的で海戦に乗り込んだ最中も村紗は海への斬奸状十割で挑んでいるのだからああも迫力が出る物だったのでしょう。
前編の方でも氏の作品を取り上げましてそちらも長文感想が出来上がってしまったのですが、あちらを洋画や戯曲の格調高さと称するならばこちらの方は活劇や少年漫画でしょうか。
文章至る所からギラつく剥き出しの感情が、こちらの方が渇望的に読者側を煽ってくる構図となっていて、本当に両作甲乙付け難いものです。
ただもし本当に雌雄を決させるのであればこちらでしょうか、バードの梟雄っぷりと村紗の対比の熱量がやはり好きなもので…。

 

  • 笠にゆうきを隠して 作者:ハンナブラ サイズ:40.6kb

艶めかしい肢体の描写や軟膏の塗布の描写がやや成人向けに片足突っ込んでいるような所もこの作品の特筆点に挙げられますが、それ以上に鈴仙の淡い感情の機微が丁重な点も挙げられましょう。
恋慕を自覚する鈴仙とは正反対に無自覚な魔理沙の姿、薬売りとしての余所行きの変装で自らの期待や恋情までもを無理矢理隠そうとする姿。個々の描写に不随する感情や行動が繊細に描かれており、それを鈴仙の一人称視点という文体で巧みに表現されていました。寧ろ視覚的な表現という点で言えば、先述の艶めかしさもこの機微の表現の一部かのように思わされていたのかもしれません。
後はやはりタイトルにもあるように、笠と髪についてでしょうか。変装時には笠の下に髪を纏めている鈴仙が、魔理沙の何気ない一言によって髪を意識し出して。
首筋から梳き上げる仕草もシュウカイドウの匂いを意識してしまう所も、鈴仙の感情を切に表現していて読み応えがあったものでした。
にしてもシュウカイドウがウリによくあるハート型の葉を付けるって点もなんか色々考えてしまいます。

 

  • 殺しあい 作者:バームクーヘン サイズ:4.7kb

冒頭は殺伐っぽい文脈を匂わせているのに、少し意固地になってしまう穣子の姿と言い静葉のあっけらかんとした口調と言い、ミスティアも含めてなんだかんだ可愛らしい作品に纏まっていたのが短編的で良かったと思います。物騒って単語に違和感を覚えなかった静葉もちょっと抜けてて良い。
後は地方名で勘違いオチを付けておいてから実は穣子だけじゃなく静葉も勘違いしていたってラストに落とし込んでいたのが何気に好きで、地方名の部分だけで終わってたらマイナス評価だったかもしれないぐらいには丁度の塩梅に落とし込まれていたように思えます。
しかし『これではんごろしにします』のおばちゃんの画像を最近めっきり見ませんね…。ネットの流行りの栄枯盛衰の速さを切に感じてしまいます。

 

  • 魔法キャンディの浮かぶ夜 作者:あぶらげ サイズ:9.9kb

魔法の加減が分からなくなったパチュリーに対する荒療治と温かさが主軸の作品で、その荒療治に料理の如く繊細な下拵えの手作業を設けるというのも面白い作品でした。
紅魔館ではいつもの事だと言いたげに緊張を感じさせないふんわりとした文体が、そのまま作品の雰囲気にも現れていたように思えるぐらいにとにかく優しい感触が印象的で。最後のレミリアの一言も失礼でちょっと我儘で、だけれども作品全体から漂う優しさがそれを中和していたのが良かったように思えます。
魔法キャンディ、やはり発想が可愛らしいですね。少し見てみたいかも。

 

  • Creation of Creator 作者:きさ サイズ:119.6kb

これで何度目かの長編特有の感想を書き過ぎて向こうに投稿しちゃうやつを成し遂げてしまったのでこちらには手短に。
この作品、一度秘封の中編を書いた事のある身としても秘封倶楽部の二人の位置付けをこう運ぶのかと感嘆させられたものでした。
深夜に氏が秘封に苦戦している旨をよく話されていたので如何なる物になるかと考えていたら本当に凄い物を読んでしまったという気持ちで満たされるぐらいの勢い。
あとこれはしょうもない話ですが、ES細胞然り生物倫理が技術進歩の小さくはない足枷になっていると思っている身としてはテセウスの船と称するのも強ち間違ってないのです。
将来の利権と今の利権の二兎を追ってしまい全ての原因となってしまった門脇氏に対し、その後の行いを加味しても自分は怒りこそ抱きはすれど責める事は出来ないですね…。
それはそうとして京大病院に時折通っている友人のせいで病院のシーンが思いっきりそれにしか見えなくなっちゃったの本当に現実のバグ。あそこのマスコットキャラのくーぷぅの顔が過ぎってしまったの事故ですよこんなん。なんで??

 

  • 映画、city、やさしさに 作者:水上缶詰 サイズ:27.5kb

まず演繹的な入れ子メタフィクションって時点で良い発想ですよね。どこまでが現実階層でどこまでが劇中劇階層か分からないそのあやふやさが実に頽勢的。
幸福の中でも不幸に充てられて前に進めなくなってしまう前二篇、居なくなった姉の幻想がこびり付いて離れず憑き纏い害を成し、それはまさしく酩酊特有の浮遊感のようで。そこから直後の一篇では紫苑が女苑の手の届く範囲に居てくれてかつ現状を打破する切っ掛けにすら成り得るという、直前からの見事な対比を描き切られ地に足の付いた安心感さえ覚えたものです。
繰り返し描かれた呪いというのも、結局この作品においては紫苑と女苑の姉妹関係とすらも思えそうな物でしたが、それを最後では同時に愛や祝福とさえも言わせしめる推移もまた良く。
不幸の連鎖の奥底からささやかな幸福に至るまでのカタルシスは成程こういう階層構造の物語でも得られるのだなとさえも思わされます。御見逸れしました。
まあしかしこの劇中劇階層、全部面白いからズルいものですよ。それぞれ単一の作品として振る舞えるのに、相乗効果でもっと面白くなってるのだから尚の事です。

 

  • あかり from HERE 作者:灯眼 サイズ:31.7kb

いやその…前編で長文感想投げた作品の作者二名に間を開けずにまた長文感想を投げてしまい…。いや面白い作品を書く方が悪いが?開き直りが過ぎる
執筆活動への意識的な側面という点がとりわけ面白かった当作品ですが、やっぱりラストシーンへの加速が滅法に気持ち良い作品としても凄く面白いんですよ。中盤で匿名のファンレターに対してどこか雲を掴むような反骨精神を抱いて執筆に臨んだ阿求が、最後に小鈴への嫉妬とも言える明確な反骨精神を持って執筆に熱を入れた、謂わば成長物語と考えてもやはり好き。
恐らく前編で取り上げた氏の別の作品が無かったら、まさしく"氏と言えばこの作品"という感触が大幅に更新されるような作品だったとも言えるでしょう。
因みに少し申し訳無い事なのですが、あとがきを読む直前までタイトルの由来が氏の名前が"灯"眼だからというのもあるのかなと勘違いしてました。
元となった曲を折角なので聞いてみたら成程、映姫の説教の文脈はこれもあったのかもとも。『日々の隙間にふざけろ、目一杯遊べよ!』というリリックは阿求にも映姫自身にも掛かっているようで愛おしい。

 

  • 少女ああああのデータはありません 作者:転箸 笑 サイズ:13.1kb

大学に進学して身の丈が逆に縮まった菫子が久々に怪異と触れて奮起する、その道中の感情の持ち様が不思議な現代的説話譚にマッチしていて妙な魅力があったのが印象的。
それでいてバイトとの兼ね合いや自販機で購入する飲料といった部分でしっかりと菫子の成長という要素を抑えていたのが、短い作品ながらも確かな読み応えを生み出していたように思えます。
それと菫子の感情面についても、昔抱いていた万能感が成長するにつれて薄れていく、ダニング・クルーガー曲線の如き感情を自認しながらも、初めから自販機を運ぶ前提で思案する姿も良かったものでした。
その文脈で行くと『私には、その時間に見合うだけのお土産話をこさえる義務がある。』って一文も好きですね。この菫子なら幻想郷に行けなくなる訳が無いという感覚を文中で補完してくれるのが心地良く。
しかし菫子のように"喉の乾いている"人間は自販機からしてみれば少数派なのでしょうか。何か物哀しいような気がしてなりません。

 

氏が氏なので『半年遅れの夜伽話への追悼作品かな?』ってのが第一感想でした。多分そんな事無いと思うし凄い失礼だと思う。
二進も三進も出来ずにその場で停滞し退廃していくだけの二童子の表現が実に蠱惑的かつ柔らかなタッチで描かれていたのが印象深かったものでした。
悲観的なハズなのにそれを匂わせまいと自ら穢那の火に焼べられる里乃と、その衝動を余す所無く拾わされる舞の不埒さが汚らわしくも悲哀さえ纏っているのです。
ポケモンブラック・ホワイトのNの部屋を思わされるような、そんな気分。まあしかしそっちの畑の人は本当に表現が上手いのだと実感させられましたね…。
『だから茶番。ぜんぶ茶番。』から続き畳み掛ける一行だけでも特有の強さを感じずにはいられません。それはそうとしてサトノK2ってなんだよ。

 

  • 結局、釣れるに越したことはない 作者:めそふ サイズ:31.3kb

総じて王道の二次創作と言うべきか、そういった起承転結を以てはっきりと示してくれる展開の読ませ方が実に面白い。
特に終盤においてフランドールが得た悔しさを咲夜も味わい、かつそれ以上の悔しさを得させてから共同作業という形に運ぶ事で、二人共いっぺんに釣りの楽しさを享受させるその展開の妙ですよ。
湖のヌシに打ち克ち竿を振り上げた瞬間から地の文が情景描写に振り切っている部分も、こちら側の読みたい文章を丁寧に出力してくれた感じさえもあって実に楽しいのなんの。
全体的に読み易い文章としてのお膳立てがかなり高く、40kb弱の作品だと言うのにスルスルと読ませてくれるというのもあったのだと思います。
しかし十六夜咲夜とかいうキャラクターを魅力的に描いてる部分もやはり好きなんですよね。湖のシーンで釣りの醍醐味は景色だの宣っておきながら、『やはり軽率に適当な事を言う物じゃない』って後々になって地の文で暴露されたらたまったものではない。けれどもそこも面白いのだから実に不思議。

 

あとがきはないよ

東方小説投稿サイト「東方創想話」 作品集235 感想前編

東方虹龍洞~Unconnected Marketeers、気付けば体験版どころかSteam製品版、はたまたパッケージ製品版までもが出てしまいましたね。
時間の推移も熱量も甚だしく、ExやLunaticでの縛りプレイを和気藹々とやっている内に早数ヶ月…と思いきやまだ1ヶ月。twitterでもなんかよくわかんない考察モドキや魅須丸さんを軽く書いた絵が異様に伸びたりして新作ブーストを思い知らされたのも遠い昔のように感じます。
その他にも静岡で春季例大祭が開催されるわTouhou World Cup2021が開催されその日程を全て終えるわモンハン新作は出るわモンハンは2回もアプデされるわ、個人的には色々な出来事が目白押しでした。

 

…何が言いたいかって?
東方創想話に全然入り浸れなかったんですよ。

 

大きい理由として4月入ってから格段と忙しくなった事も挙げられますが、まあなんやかんやでそんなこんななので今回は概略が書けません。
何せタイトルも『作品集235 感想前編』ですからね。という訳で今回は肩の力を抜きつつ、備忘録の側面を一層強くして進めたいと思います。
いつもの堅苦しい前置きも概略も無し、何故か作品集235を前半後半50作ずつに分けて十作品ピックアップ紹介みたいな流れになりますが、細かい事は気にしないで貰いたいです。
結局四日坊主でしたね


ピックアップ作品紹介(作者名敬称略)

  • かげのおおかみ 作者:蕗 サイズ:26.2kb

毎度幻想郷という空間に対し、如何に自機や面ボス達が和気藹々としようとも妖怪と人間の間にはどうしようもない殺伐さで隔絶が存在しているという前提で物語を見る事が多い気がします。
そもそもこの作品はそういう先入観を持って読んだからこそ自分にバチクソ刺さったと言っても過言では無いのですが、でも実際にはと設定開示された後の流れも実に上手い。
妖怪と人間の境界線は確かに存在しているのだけれども、道理の通し方の中に優しさが存在しているのが語り部の視点からも言葉選びにも表れている。著者の芯の通った愛が表出してるんですよ。
なんと言うか、モンスターズ・インクみたいですよね。主人公コンビが頭と毛ってのもそうだし(?)、少女の中にある忘れられない思い出に最後に手が届く所もそう。
あとこの作品の文章の妙として、オチを知ってから読み返すと文中に全て書いてあって。推理小説物を読む時はそういう頭の働かせ方がなんとなくで出来ているので一周目でも気付く事が多いのですが、今回はそういう雰囲気を一切感じさせずに驚くような開示をしてきたので、完全にしてやられたという気分になりました。前述の通り先入観が完全にキモ。

 

  • いつかさよならを言うまでは 作者:海景優樹 サイズ:37.6kb

メディスンと永琳の間にある種族的な不可思議な軋轢を永遠亭周囲の反応も通しつつ、お互いの立場を交互に映し出す展開方式がカップリング物として絶妙に成立させていたのが印象的でした。
永琳の人間的な立ち振る舞いと蓬莱人的な自意識が入れ混ざっている上で、メディスンからの認識が特別視しながらも人間の範疇である点は実に書き口が丁寧だと感じたものです。
氏が好きだと公言して憚らない永メディが遂に形になりまして、最初はカップリング要素の抽出だけで物語が終わったらどうしようかと思っていたのですがそうでもなく。
キャラの感情と風景のリンクも簡潔かつ丁寧で、字の文から情景がスッと伝わってくるような綺麗さも湛えて起承転結が分かりやすく表現されていたように思えます。
基本、人によりけり許容砂糖濃度は様々だというのは周知の事実かと思われますが、自分の中では甘すぎずの位置であったのが本当に僥倖でした。
因みにですが、タイトルの『いつかさよならを言うまでは』から最後の一文が『いつまでも』というニュアンスで締められるの凄い好き。

 

  • 湖に抱きしめられた 作者:ドクター・ヴィオラ サイズ:38.6kb

この作品に関しては感想が長くなってしまった為、例外的に感想欄に感想を投げ入れてしまいました。そういう事するなら最初っから全部感想欄にブチ込めやになってしまう。よくない。
向こうでは体を立てて書いたのでこっちは崩して書きたい事だけを記述するものとします。と言ってもこの作品はなんかもう本当に凄いですからね…。
氏は前作品集収録の『「水底のラフィア」より』をアプローチにこの物語を書いたと言っていて、主要な登場人物がわかさぎ姫とパチュリーという点は言わずもがな、本と彼女達の関係性を説き、未開の本を翻訳する術を身に付ける姿を描いていた『湖に抱きしめられて』という作品は実際そのエッセンスが多分に含まれていましたね。
ただあちらの作品が読者も傷つけないような物語として進行していたのとは対照的に、この物語はどこまでも不器用なパチュリーが自らを奮い立てて読者を引き摺り込もうとしていたのが印象的でした。
本当に言葉遊びが素晴らしい。まるで戯曲を紡ぐかの如く描かれる氏の作劇に目を奪われてしまうのですからつくづく才能と称したくもなりますよ。それも氏に対してムカつきを抱くレベルの。
何度読み直しても終盤のパチュリーが如く『ピャーー!』ってなっちゃいますからね。
ズルい作品ですよ。本当に。

 

  • 首を長くしてその日を待つ 作者;阿上坂奈 サイズ:11.8kb

三つの掌編で蛮奇のキャラを立てながら、相手に人間と妖怪の距離感を顕著に表せる三者を取って蛮奇の背景を軽くなぞり、そして最後に天邪鬼を出して蛮奇の内面を描写する展開。
若干ほんわかギャグのようで居て、それでいてどことなくそうではない物を纏った独特の雰囲気は上記で紹介した『かげのおおかみ』と似て非なるよう。
短編かくあるべしと主張せんとばかりの王道の起承転結の中で、跳ねるように登場人物達が感情を動かし言葉を紡ぐ様が本当に読んでいて気持ち良いものでした。
この作品は氏の作品の中でも特に会話文主体で、台詞と台詞の間に地の文を軽く挟みながら物語を進行させているのですが、その地の文が端的に書かれ行動と感情がほぼ直結している事によって文章全体のテンポを全く損なわず、ポンポンと会話のドッジボールを楽しめた気がします。

 

  • 怪鳥 作者:封筒おとした サイズ:14.9kb

『尾羽の燃えた軍艦鳥は持ち主の手を離れ、物語の上に羽を下ろし、やがて一つの巨大な、どす黒い巣を造った。』この一文を書いてしまえたその事実一つだけで百点満点。
既に軍艦鳥に営巣された魔理沙の傍若無人な描写もさる事ながら、この作品はやはりパチュリーを表現する為に幾重にも積み上げられたどこか病的な地の文がキマっているのなんの。
現実と幻覚の境界線が非常に曖昧な味付け、読書への病的じみた執着に手段と目的の逆転。パチュリーの懸念をサイケデリックに表現してしまったのはやはり氏の味であるとしか。
本当にこういう錯綜させられ朦朧とまで至らされるような、この風邪薬半瓶まるまる飲んだ時のようなあの感覚を文章にさせる事において氏の右に出る人は居ませんね。
しかし、冒頭においてはパチュリーと軍艦鳥が対極の存在にあるかのように小悪魔は言っていましたが、自分は究極的には同じ穴の狢であるように思えます。生活する為の最低限の活動にですらソレに侵食されてしまってしまえば、最早ウロの空いた木々と同義でしょうから。

 

  • 夢歩く妖狐 作者:灯眼 サイズ:139.7kb

この作品に関しても感想が長すぎて例外的に感想欄に感想を投げ入れてしまった。正直すまないと思っている。取り敢えず体裁整えて書きたい事は全部あっちに書いたからこっちは手短に。
まあ以前から述べている事なんですが、自分はドレミー・スイートというキャラクターをデウス・エクス・マキナ的に運用する創作が苦手でして。この作品は本当にそんな事は無く安心しましたが、ともかく人情味が強い。藍を主点に据えて苦労人属性が増しているのか、読者にとって気持ち良く喋ってくれる。『あーあ言っちゃった』とかとてもすき。
そもそもにして全体的に暖かい作品ですよね。仮面舞踏会も襖も、表面を破らない人の良心を前提に据えている訳で。それと一緒なんですよ。
あと氏の作品って個人的には秘封か永か妖のキャラ中心の印象が強いのですが、その中でも妖々夢組主体の作品の集大成のような感覚さえ覚えたもの。
もしかして『衣着ぬ』の長編バージョンだったりします?それはそれで不思議と面白いけど…。

 

  • 着衣遊泳 作者:カニパンを飾る サイズ:20.3kb

この作品では一貫してお燐が自由気儘に描かれてたなあ、とかやや散文的でそれがより一層お燐の猫らしさを深めていたなあ、とか。なんか肩の力を抜いて読める作品。
さとりにとって地霊殿が居城であるように、お燐にとっての温水プールは小さなお城だったという話なのだけれども、それを監視塔というありふれた物体によってより強く意識させられましたね。
形式的な作法、ずっとあり続けるであろうと思っていた物の崩壊、思い出の形。それがさとりとこいしの対比で、お燐だけが見ていたどこか幸せな風景だと感じられて。
だから赤い笛はお燐の物で、確かに温水プールが存在していたという証で、地に足付かない主との何よりの繋がりであり続ける事が出来るのだろうなという希望が抱けるのでしょう。
自分はこの作品を読む内に特徴的な地の文に引っ張られつつもどこか温かくほんわかとした言語に出来ない何かを何度も抱いたものです。でもきっと言語になんて出来ないんですよ。ぽんっ、って弾けて終わるだけの衝動的な感情の発露。それが何より愛おしい。

 

  • 菫子だらけ 作者:くろはすみ サイズ:16.0kb

読み終わった時の第一感想が『氏が新香霖堂読んだ記念に誰かをボコしたくなったのかな』だった節はちょっと申し訳無さが募ります。ごめん嘘。
こういう平行世界ネタで菫子を扱う作品はやけに新鮮に思えるのは気のせいなのでしょうか、菫子のやや浅慮でやや聡明な部分が露悪的に魅力的に描かれていた気がします。
後は何気にヘカーティアの描き方も好きでした。力を持つ者の足るを知っている感じや別格さがこうも短い会話や地の文だけで伝わってくるとは侮り難し、完全に物語の上ではサブのはずなのにそっちの魅力ばかりを感じてしまうとはさもありなんか。
それはそうとして、夢のシーンで二次創作やら解釈やらに対する氏のそれがちょっと含まれてそうでクスってなってしまいましたね。そういう邪推はよくない。
まあお菓子の存在しない世界なんてものは勘弁して欲しいものですが…。可笑しな話です。

 

  • とても穢れたもの 作者:転箸笑 サイズ:3.4kb

本当に構成が上手い。悪意も全く存在しない癖にここまで不条理に全てが空回りする様を見せ付けてくる様が恐ろしく上手い。
芳香が焼豚に垂涎し乞食への対応に悩む部分を強烈に描き、そしていざ渡してからは会話文主体。文章量だけで見れば竜頭蛇尾とも称せるのに、逆にそうだからこそ味が出ている。
読者への読ませ方を計算しているのかとさえ思わされる程に綺麗な物語だし、その癖してあとがきから隠しきれない悪辣な巡り合わせを感じざるを得ないのは、手放しで絶賛する程のムカつきですよ。
まあそれはそうとしてこの青娥の最後の振る舞いがどストライクでした。
霍青娥ってこういう女ですよね。大好き。

 

  • 青空の下で手をふって 作者:モブ サイズ:9.0kb

恐らくこの作品を一言で表せば、卒業式という節目から描いた成長の道筋なのでしょう。そりゃそうだ、少女の生き霊が生まれた理由は間違い無くそれなのだから。
でも菫子は少女のようにはならず、連続体のまま卒業を受け容れて幻想郷に居続けられている。それどころか卒業式を経らずとも深秘録を経て成長をしてしまえている。そしてやる事無しに寝ようとする訳でも無く、ちゃんと外の世界に地に足を付けてどちらも自分だと言い張っているかのように振る舞える。
別に卒業式が特段変容を齎すイベントでないように描かれながらも、そういった部分によって成長した姿を見せられる地の文の妙が良いものでした。
後、快晴の下で手を振るラストも少女とは思いっきり対比的でそこもまた素晴らしいですよね。自分から歩み寄れる菫子のその姿。誰かに歩み寄って貰わずとも自分の存在を誇示出来るのです。
まあしかし菫子は深秘録から概算すればとっくに高校を卒業している年代でしょうけれども、彼女の道はどこに伸びてるんでしょうか。不思議でなりません。
自分は中学は中高一貫で特に無し、高校も全校集会並の適当さで30分程度で終わり、大学の卒業式に至っては時勢で流れた人間なので、真面目に小学校の卒業式ぐらいしか節目気分が無かったかも…。


取り敢えず後編は1ヶ月後ぐらいには投げたいですね…。
まだ後半50作全く読めてないのでいつになるやら

東方小説投稿サイト「東方創想話」 作品集234 概略

最早恒例行事と化していて自分の中でも驚いている節があります。
最新記事五枠の欄の上四つが既にそそわ関連の記事で埋まっているのが逆に不安ですね…。
一応幻想人形演舞がメインのブログだったハズなのですが。

 

もう言わなくても差し支え無いかと思われますが近傍には東方創想話という東方小説の投稿サイトがありまして、今回はその234個目の作品集についての概略記事となります。
概略成分が薄くなり特に面白かった十作品のピックアップ紹介の列挙がメインとなりつつある今日この頃ですが、いつも通りの形式でいつも通り1kb=500文字換算のまま話を進めていきたいと思いますので何卒お付き合い下さい。
ラスト三作のkb数がどれも一桁台なので竜頭蛇尾感は正直ある


東方創想話 作品集234(2020 12/27-2021 03/02)


概略
・初投稿の方は12名、その方々の作品数の合計が21作品なのでかなり多い部類かと
・一人で20作品投稿されている方の存在も踏まえると今回はそういう作品集だったのかも?
・2000点超え作品はゼロでしたが3000点超えが1作品、おめでとうございます
・作品集の埋没は2ヶ月近く、2月は28日しか無いのでまあまあという感じ

 

ピックアップ作品紹介(作者名敬称略)

  • おてんとさまが見てる 作者:くろはすみ サイズ:11.8kb

余りにも孤独に慣れすぎた盲の手を引く暗闇の話。

この話はモブ主人公の持ち味が色濃いのでまずそこから触れるのですが、盲目でありつつも妙に宗教的と言うか弱味を見せずどうあろうとも生きていける術を知ってしまっていたそのどうしようもなさがキャラ造形として秀でていて。
最終的に"おてんとさま"そのものは自己完結の手段でしか無かったと知ってしまうのだけれど、それを知覚する時には自らの身の内や弱味をルーミアに完全に曝け出しており、自己完結から脱却出来ていたというストーリーを一層引き立てていたと思います。
この誰かに曝け出すという行為が即身仏のように自らを削り研ぎ澄ましていくのと同義であるからこそ、最初の出会いから彼女の地の文における世界が急速に拓けていく書き口が悲観的な面を感じさせずにいたのでしょうか。"おてんとさま"に文字通り照らされていない彼女が最終的に天道様とは追聯する闇に抱かれてフェードアウトしていくのも、聞き手がルーミアであった意味を確かに感じずには居られない巧手さを存在させていました。
モブ主観でありながらも幻想郷の世界観に則って、かつルーミアの扱いを舞台装置に留めずしっかりと描ききった異色の作品です。

 

  • 一番、隣に相応しい 作者:奈伎良柳 サイズ:50.2kb

磨弓の成長と、それでも越えられない壁が存在するのかという話。

この話で主軸にあったのは磨弓が『もしも、私より強い埴輪兵士が出来たら、私はどうなるのだろう』と悩む姿で、畜生界から人間界に降りた際に描かれる修練と成長の話とは究極的に対を成す物でした。
であるからして、自らよりも強い埴輪が一から創られる事は無いという前提が明かされてしまえば後は本人の成長次第という風に話が進み、加えてその進歩の具合を妖夢との戦績で示す事で端的に表現していたのは実に巧妙な物。
頬を撫でる、血や涙を流す、剣を振り抜くといった軽微な動作に登場人物の感情を込めつつ物語を動かしていく地の文の柔らかさとスピードの付け方もまた面白く読めたものです。
後は妖夢の話の絡ませ方も良かったなとも。鬼形獣で切り結んだ同士であり、技を互いに研鑽出来る武芸者であり、同じ悩みを共有できる立ち位置でもあるとして話を更に盛り立たせていたのでしょう。
主従関係という枠の中で丁寧にキャラを回して着地点を見出されたのだな、とも思わされる中編でした。

 

  • 忘却の技法 作者:そらみだれ サイズ:18.8kb

人生経験の差から来る妹紅の歴史観の話。

会話主体で構成された物語の中で確かに妹紅の人生経験や苦渋が裏に滲みつつも、それらの要素に話が引っ張られる事無く、寺子屋の少女が主人公というポイントを崩さずにすっきりと読める丁寧さが存在しているのがまず良いものです。
妹紅のその一挙一動を魅力的に描く事によって、読者にも作中の少女と同じように興味を惹かせて両者の心情を軽くリンクさせてくれるこの書き方があってこそ、柔らかさを以てこの話の着地点にも付いていける感触とでも言うのでしょうか。
読者は当然ながら妹紅のその推移を儚月抄等の原作で知っていますが、それを知る余地の無いモブ主人公ならではの触れ込み方を上手く書いているという点もやはり好きなものですね。
後、少女の前では詮索を誤魔化すのが下手だった妹紅がラストの慧音との会話シーンでは寧ろ相手を弄る側になっているのも、知り合ってからの歴史の長さの差みたいに思えて良い塩梅でした。
甘酸っぱくてニヤけてしまいたくなる、そんな恋路と羨望の入り乱れた作品です。

 

  • 正邪はお家に帰りたない 作者:石転 サイズ:26.9kb

正邪の畜生界出奔騒動の瑣末を垣間見る話。

鬼人正邪という天邪鬼のキャラクターを日記という媒体でギャグ色濃く真面目に描きつつ、それを覗き見る鬼畜生共のツッコミが適宜入るという作劇構成自体がまず面白いんですよ。
それでいて四者四様でキャラが十分に立っているが故に読み疲れせず次の頁へ次の場面へと読み進められ、終いには大団円で終わってくれるのですからそれはもう楽しかったと言い表す他無いのです。
個人的にこの話で特に上手いなと思ったのは鬼傑組という組織を描くにあたってお出しされたモブ幹部の扱いで、決して原作キャラの役割を食う事無くキャラが立っていない訳でも無く、絶妙に美味しい所を持って行く事によってラストで鍋を囲むその一文が『五人』であって良かったと思わせてくれる所ですね。暖かさによって世界観が維持され続ける点に読者が安心出来るのは大きい。
畜生界でも正邪は正邪だと頷かせてくれるような、そんな一作でした。
あと『テメェの都合が良すぎる妄想の人格で語るクソ』、アレは自分も嫌いなんでよく分かる。

  • 鬼のいぬ間に 作者:転箸 笑 サイズ:10.8kb

人の営みの中で素性を隠したい鬼の話。

最初は村から見た異邦人という形で話が進み、そして華扇視点に物語が移行した所で人外から見たヒト社会が描かれるこの対比も中々ですが、それ以上に昔の鬼としての性質が色濃く残る華扇がヒト社会の中に身を溶け込まそうとして尚も出来ないという部分を、悲壮感も一切抱かせずに鬼の剛直さと妖しさで地の文を彩る事で演出しているのがなんとも読み応えがあったもので。
『掃除もせず、服に少しだけ付いていた血をおとすと、家を出た。ザクロはもういらない。』の一文とか特にそうですね。改行を駆使して視点誘導をする事で人外の不気味さを一層深く湛えさせているのが短編らしくて良かったり。
だからこそ、人の間に混じれず柘榴に手を出し終いには本物の人に手を出してしまった華扇が、ラストにおいて柿の葉寿司という人の食べ物の為にその地にもう一度戻って来ていた様子に不思議な物を感じずにはいられないのかも。
昔話としては少し不思議で不気味で、だからこそ出ていた味が表現に出ていた、そんな短編です。

 

  • 祈りと奇跡とアングレカム 作者:夏後冬前 サイズ:36.2kb

秘封倶楽部が神と奇跡の実在性に触れる話。

こういう科学世紀ならではのアプローチから世界構造への深刻なダメージに至るストーリーの、その根幹が秘封倶楽部のフィールドワークではなく人の技術による物という導入が凄く好きです。
それでいて作品内での科学世紀の設定や物理学的なニュアンスを苦も無く読ませてくれる構造のお陰で、より一層起承転結の起と承の部分が読み取り易くかつ魅力を底上げしているのも楽しかったり。
そしてアングレカムを名乗る不審者との対峙然りそこからの怒涛の展開然り、汗が背筋をなぞりつつも切実なまでに神というシステムへ得体の知れぬ感情を抱かせてくる急転直下こそが真骨頂。
解明の出来やしない無い未知に対し慌て戸惑いつつも最終的に意を決し、毅然とした態度で応じられるようになるまでのメリーのプロセスの演出の仕方には、SFというジャンルを差し引いても流石としか言い表せませんでした。
あとこれは本筋とは直接関係しないのですが、蓮子とメリーの会話から圧縮された知識の数々がそこはかとなく顔を覗かせているのが知的なニュアンスを感じさせていて凄く読んでて面白かったですね。
読後に爽快感が味わえる作品という訳では無かったにせよ、それでも十二分に楽しめる中編でした。

 

  • 『水底のラフィア』より 作者:真坂野まさか サイズ:63.4kb

日記を手に入れたわかさぎ姫がそれを読もうと奮起し心を躍らせる物語。

最初に言ってしまえば、この作品はこの作品集の中ではかなりの一線を画す存在であるとも言えます。
その確かな技量に裏打ちされたであろう優しい地の文の書き方もそうなのですが、一番はやはり"読書"という読者にとって特に感情移入がし易いテーマを主軸に置いているという点に集約されるのでしょう。
東方創想話というサイトの特性上こういった作品を読む人の殆んどが読書好きであるという前提こそありますが、主人公に据えられたわかさぎ姫という読書初心者が紡ぐ心情描写の数々に対して、その読者視点を通す事によってストーリーをより深く味わえかつ懐古にも浸らせるというのは中々出来た事では無く、語彙を投げ打ってただただ素晴らしいと表現する事しか出来ない程の物です。
これこそが没入であり初心であり、であれば読者は自ずと中盤のパチュリーと同じような岐路にも立たされる。『何かを好きでなくなることは恐ろしい』なら自分は実際初心を忘れていないか、読書愛とは何か、等々。
だからこそその後に来る菫子との問答や『水底のラフィア』探しの終着点がより刺さるのは当然とも言えましたね。本当に優しい書き口で読者がふと抱いてしまった蟠りを氷解させてくれては、この物語を好きにならない訳にはいかないのですから。
実際語りたい事が多すぎてストーリー本編に触れた紹介を余り出来ていないのですが、良かった点を探せば枚挙に暇が無いというぐらいにオススメできる中編です。

 

  • 部屋に降る魚 作者:ふさびし サイズ:4.1kb

蓮子の見た一朝限りのワンルームの幻想風景。

この作品の上手い点として、部屋の中の水が魚になってしまうという異常現象を視覚的に表現し続ける事によって臨場感を生んでいる事が挙げられます。
秘封倶楽部を形作る代名詞とも言える瞳を主体に、短いながらも瞼に焼き付けてくるかのような鮮烈な出来事を鮮明に切り取って、幻想的もしくはSFチックな展開に収められている。
決して大きな展開があるとは言えないのですが、かと言ってストーリーラインの魅力が足りない訳でも無いというのが十全に伝わって来るようで、秘封倶楽部を短編の題材に扱う上での難儀な所が解消されていたのかもしれません。
一個の出来事を切り取った形の物語だからこそ演出できる、難しい事も考えずに読めるような気軽さが心地良い短編でした。

 

  • 氷室 作者:マジカル☆さくやちゃんスター(左) サイズ:6.2kb

氷を売る男と氷を作るチルノの二人三脚の話。

忘れられたモノが行き着く場所で尚廃れゆく物の存在や幻想郷での冷凍事情を引っ括めて、それでも氷売りという外ではとっくに寂れた職業が息衝いているのを確かに感じられるのが実に良いもの。
にとりの開発した電気氷室に主人公の家族構成が重なって氷売りという職業自体がもう長くは続かないと序盤は匂わされるのですが、相方として出てきたチルノの無邪気な快活さが氷売りの目線を介して語られる事によって、悪い終わり方にはならないだろうという予感に手応えを与えてくれるのもモブ主人公であるという点の為せる技でした。
郷愁や技術の進歩に置いてけぼりにされそうになっても、そこに居て生計を立てている幻想郷住民が居るのだと、世界観の下地を再確認させてくれる短編です。

 

  • 霊刀「超硬」 作者:灯眼 サイズ:4.3kb

蛙の親は蛙という話。

最後の『まったく、ふたりそろって剣馬鹿ね』というセリフに象徴されるように、妖夢と妖忌の似通った部分を行動のみで示唆するのが上手すぎるんですよ。
最初は真面目な地の文で霊刀の業物具合と妖夢の流され易さを直線的に描き、妖忌からの手紙の文体も流々とした生真面目さを描きと、ともかく文章に一切の曇り無く進行するのはやはりこの作者の方の持ち味なのでしょうかと勘繰らずにはいられません。
それでいて物語として見ればちゃんとした形に収まっているのですから、妖忌の堅物な間違いがより一層強調されてしまうのでしょう。だからこそこの作品が良いと言えるのですけれども。
バレンタインという時期ネタを巧みに昇華させた、面白おかしい短編でした。

 


紹介しきれなかった作品の中にも珠玉の物はまだございますので、まだまだ探してみては如何でしょう?
今回は特に得点数上位の作品からの抜けが多かったという事実も存在しているので…。

 

あと完全な私信とはなりますが、twitterでも申しております通り今月21日開催の春例大祭ではす03aのスペースにて出せたら薄めの漫画を出す予定です。
また、す10a『はろうぜっぷ』様の東方神霊廟ダークサイド合同にて軽い漫画と、つ14a『イデアタウン在住』様の再録集にてよくわかんないものを寄稿させて戴いておりますので、興味がございましたらそちらの方もどうぞ宜しくお願い致します。

ぶっちゃけ新刊を出せるかはもう本当に絶望的です